FASHION / TREND & STORY

ベイシックスやM A S U etc.。2023年春夏の東コレを盛り上げた、ショーのダイジェストレポート後半戦。

9月4日に閉幕した「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 S/S」。注目のショーを振り返るダイジェスト記事の後半は、DHL社の廃棄ユニフォームをドレスに変えたベイシックスBASICKS)や新進メンズブランドのエムエーエスユーM A S U)、ハイク(HYKE)のオンライン配信などをピックアップ! ※レポート前半戦はこちらから

BASICKS/“消費”がテーマ。廃棄された「DHL」ドレスも披露!

2019年に休止した元クリスチャン ダダCHRISTIAN DADA)の森川マサノリが新ブランド、ベイシックスBASICKS)を始動したのは、今年3月。今回、9月1日にDHL社との取り組みにより、初のランウェイショーを東京・新木場の物流倉庫で開催した。テーマは「消費」。会場には、大量に積まれたデニムの山がいくつもあった。ブランドのスタート時からSDGsを元にした服づくりを軸にしており、今季もサステナブルな取り込みが随所に見られた。

例えば、デニムは「リーバイス® 501®」のユーズドストックを再構築。協業した株式会社ヤマサワプレスはアイロンプレスを専門に行う一方、大量廃棄されたデニムを補修し、蘇らせる取り組みを精力的に行なっている。そして、エプロンドレス風に仕上げたカモフラージュ柄のルックは、倉庫に眠っていた余剰在庫のミリタリーウェアを使ったものだ。また、フットボールブランドのアンブロ(UMBRO)とのコラボアイテムも登場。

フィナーレには、ノースリーブのトップ&デニムを纏ったモデルが、DHL社の廃棄されたユニフォームをアレンジしたボリューミーなドレスを着用するパフォーマンスも。サステナブルなものづくりと向き合い、新たなステージに臨む森川の今後を見届けていきたい。

M A S U/マイケル・ジャクソンを着想源に、二面性を追求。

東京コレクション初参加となった、エムエーエスユーM A S U)。デザイナーの後藤愼平の心象に描かれていた“レッドカーペット”を舞台に繰り広げられたコレクションは、伝説のポップスター、マイケル・ジャクソンが着想源だ。「最高のスタージに立ち、圧倒的な熱狂を想像する絢爛な姿と、私たちと同じストリートで顔を隠して歩く風貌をパパラッチされた、プライベートショットの両方に魅了された」と語る後藤は、その言葉の通り、対照的な二つの側面から服の可能性を探っていた。リアルとアンリアル、フォーマルとグランジ、未熟と成熟など。それらは決して私たちの日常からかけ離れたものではなく、シャツスウェット、デニムなど身近なアイテムをアレンジすることで自然体の煌めきを放っていた。

テックマテリアルにフリルとスタッズをあしらったアノラックパーカや、キラキラと光るスパンコールをほどこしたデニムやフーディなど。ロマンティシズムを感じさせる魅惑的な装飾は、圧巻のオーラを漂わせた。自由奔放ながらどことなく色気のあるクラッシュやほつれ加工は「愛着をもって着続けた服の成れの果て」を表現したという。

「ready」コレクションと銘打たれた春夏は「二面性を破壊するのでなく、客観性ー“柔軟な眼差し”を持って捉え直すことで、新しい整合性に挑んだ」という実験的、かつ多様性を祝福するかのような雰囲気を纏っていた。個性を受け入れ、しなやかに進化を遂げるブランドの未来に期待したい。

REQUAL≡/“ブロッキング”をキーワードに、原点回帰。

RequaL≡(リコール)の“Re”はもう一度という意味」と語るデザイナーの土居哲也は今季、80年代のアンコンストラクテッド(非構築的)なジャケットの解体から始まったブランドの原点を振り返った。コレクションを「Re blocks」と題し、ジャケットの後ろ身頃同士を合わせたり、前はデニムパンツ、後ろはミニスカートといったボトムを提案したりと、既存のパターンを大胆に再解釈。「ブランドの中核となるテーラーリングにクチュール要素も加えた」と話し、トレンチコートの前身頃にチュールドレスを縫いつけたアイテムや、テーラードジャケットのショルダー部分をカットし、あえて中綿を露出させたダイナミックで新鮮なフォーマルウェアも打ち出した。

ショー会場には、今季の着想源となった土居の祖母が描いた絵画を展示。ブルー、レッド、イエロー、グリーンなど、その力強いタッチと迷いのない色合わせは、色彩豊かなルックと呼応していた。

さらに、土居がブランド設立以前に古着のリメイクを行なっていたことから、ラグタグ(RAGTAG)とのコラボが実現。自ら選び抜いた廃棄品をアップサイクルしたアイテムも発表した。「(アップサイクルは)同じものが出せないというのが課題」と言うが、過剰にダメージを与えたデニムや、細かいスラッシュを加えたTシャツなど、得意のグランジ要素を元にリメイクの法則をつくり、問題の解消に取り組んだ。また、会場に設置されたチェアにもこれからリユースされる廃棄Tシャツが被されており、演出においてもカラーとアップサイクルの楽しさを表現していた。

HYKE/不変の中で進化を遂げる、大人のスタンダード。

モノクロームのプリント柄からスタートし、ネイビーやボルドー、ホワイトへと続いたハイクHYKE)からは、ブランドのブレない基軸が感じられる。得意とするミリタリー要素や人気のアウトドア系アウター、テイラードパンツといった定番が終始散りばめられていた。そのなかで、随所に軽やかさが感じられたのが今季の特徴だ。

冒頭のパートに登場したプリント柄のプリーツドレスに合わせたのは、フライトジャケットをこの上なくコンパクトにしたミニ丈のベスト。腕にはアームケースを付け、スポーティな要素をプラスした。また、仕立てのよい白のシャツとパンツには、トランスペアレントスカートをレイヤード。足もとにはサンダルを合わせ、軽快なモノトーンスタイルを作り上げた。

ボディを覆うシックなボルドーのリブニットやネイビーのオールインワンにも、ケープのようにアームにカッティングを入れることで嫌らしくなく肌を見せることに成功している。驚きの演出や、シーズン毎にめまぐるしくテーマが変わるブランドが多いなか、不変性の大切さを物語るような「大人のためのスタンダード」が集約されたコレクションとなった。

Photos: Courtesy of brands